「BUTTER 」著柚木 麻子 新潮文庫
あらすじ
男たちから次々に金を奪い、3件の殺害容疑で逮捕された女性、梶井真奈子。(通称カジマナ)
彼女は、若くも、美しくもなかった。そのことが世間をさわがせた。
週刊誌で働く記者、理佳は梶井への取材を重ねるうちに、彼女のことば、欲望にからめとられていく。
記者が、容疑者に何度もインタビューを重ねることで、容疑者の強烈な個性、立ち振る舞いの優雅さ、女性なのに他人の目を気にしない圧倒的な自己肯定、自己愛に記者の人生観や在り方が、揺さぶらる。
正しいのは容疑者で、自分達、塀の外の社会のほうが間違っているのではないか、と。
記者は容疑者から独占インタビューを勝ち取りたい!と思い、記者生活でまともな食事生活を送っていない主人公は、料理に異様に興味を示す容疑者にすすめられた美食を堪能し、新しい世界を発見していきます。
その美食体験を獄中の容疑者に話すことで、信頼を勝ち得ていく。
容疑者に心情的にも近づいていく。
岡本かの子に似てる気がする
面白かったです。が、長いです。
この、容疑者の自分のあり方が、元になった事件を思い出す前に、作家岡本かの子を思い出しました。
どんな人だったかざっくり説明。
容姿について、谷崎潤一郎は「じつに醜婦でしたよ」と言っています。
そんな岡本かの子ですが、漫画家岡本一平と結婚しています。
子供も産んでいます。(長男太郎はのちの岡本太郎)
しかし、学生と恋愛をして同居させて三角関係の同居生活を送ります。
この学生が病死したあと、また別の男性と恋に落ち、その男性とはさらにべつの男性とも恋に落ち共同生活をします。
夫を含め、3人の男性と共同生活を送っていたそうです。
さらに彼女は、美食家でもあり、自己愛も強烈だったようです。
完全にこの小説「BUTTER」容疑者カジマナそっくり。
言い過ぎると怒られそう。
面白かったところ
容疑者と対面して会話で関係性が作られるところ
この容疑者と記者のアクリル板越しの話ってのは面白いですね。
言葉だけで、他人を操るというシチュエーションが好きです。
知能の高い犯罪者が、実際に手をくださずに塀の向こうの人間を操るという状況。
このパターンで「羊たちの沈黙」や「二流小説家」を思い出しました。おすすめ。
サスペンスだけどミステリーではない
容疑者はどうやって男性たち殺害したかを追い求める話にはなってないこと。
それよりも、容疑者の自己愛はどっからくるのか、おまえの優雅さはどこからくるのか、ほんとうはそんな優雅な存在でははずだ。
犯罪の証拠を探すのではなく、容疑者の嘘を暴くため記者は動いているようでした。
あいついいかっこしてるけど、ぜったいそんなことないハズ!みたいな情熱。
もちろんそれだけでなく、記者は父を亡くしていて、その亡くなった父に対する気持ちもこの取材に乗っけちゃってるので、止まれなくなっていました。
そういう要素もあったので、それぞれのキャラにストーリーがあるので長いです。
主人公の友人もかなり面白い存在でした。主人公と真逆のタイプのようで、根っこは同じ。後半大活躍です。
容疑者の殺害方法は絶望?
あともうひとつ面白いとこ。
男性たちが殺されたで原因?が絶望。
主人公もあわやでした。
安心、幸せ、この状態から急に梯子を外される怖さ。
これって人が死ぬほどの凶器になるよなってしみじみ。
殺害方法について調べあげていくわけではない。
だから長くなるし、ミステリー的カタルシス得られないので、そう読んでると長くてしんどくなるかも。
この本読んで得たこと
読む前
・ご飯は家族のため。
・家事は家のため。みんなのため。
と思ってました。
この本読んで発見したこと。
料理に関して、自分を守るためにご飯をつくる という発見がありました。
あと料理ができるようになるモチベとして、
「その時、食べたいものを、自分の手で作り出せるのは楽しい」
二つとも発見というと変ですよね。
当たり前な話なんですけど、なんか料理って苦手な人からするとジャッジされてる。
失敗してはいけないと思う。
だから自分のために、自分が食べたいもの作れるようになるために、料理するって思うと気が楽。
これも登場人物が言っていましたが面白いです。
家事ほど、才能とエゴイズムとある種の狂気が必要な分野はないというのに
料理、掃除もエゴイスティック。そう認めてしまう。
いいこと聞いたなと思いました。
さて、せっかくよんだのでやってみようと思うこと。
・家事は快適な自分のための居場所づくりと思う。
家族がにこやかだとここちいいので、もっと快適にすごす!ってとこへ貪欲に、プライオリティ高くしていく。
かっこいいレイアウトの本みてまねるのをやめた。
「自分の」「自分の家族の」心地いい環境作りが大事。
というところです。
じゃまた。