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罪の声 著塩田 武士 言葉でいったんまとめて、進む。

罪の声
著:塩田 武士
講談社

 


グリコ森永事件を題材にした小説。

 

この本読んで得たこと。


なにか自分にとって事件が起きた時、巻き込まれた時、

ずっとそのままだとつらい。


どうやったらいいか。

考えて、いったんまとめる。

それには言葉が必要。

言葉でもって自分の中で総括して、

次に進む。

 

 


最初にテーラーの主人公が亡父の遺品から、カセットテープを見つける。
何気なく聞いてみると、自分の子供の声が録音されていた。
その声は、30年以上前に日本を震撼させた企業恐喝事件に使われた声と同じだった。

 

このお話は、自分の父は事件にかかわっていたのか、というテーラーの主人パートと、
事件の特集記事を担当する新聞記者の二人のパートで描かれています。

 

映画だと、星野源と小栗旬。


実在の事件をもとにしたいうのでは、

以前に紹介したバターと似ていますが、

こんなにも視点が変わるのかと楽しかった。

 

この企業恫喝事件は、いったい何だったのか。

時代は、社会は、被害者は、かかわった人間にとって、という社会的な視点から。

 

バターは、これは食事とは、女性の生き方とは、女性にとって、男性にとってというパーソナルな視点から。

こういう比較をして楽しんでも読めました。

 

 


もとになった「グリコ森永事件」について、実は全然知りません。

 

世代が違うこともありますけど、昭和時代の伝説みたいな。

 

「3億円事件」などとおなじくらいの距離感です。

 

たくさんあった戦後の怪事件のうちの一つという印象でした。

 

読み進めるうちに、お菓子に毒をいれるという、不特定多数の子供まで対象にした凶悪な事件であること。

 

多数の会社が恐喝されていたことなど。

 

関係者はまだ存命で、現代と地続きであること。

 

などなど。

 

知らないことがたくさんでてきました。

 

結構分厚いですが、後半は一気に読みました。

 

序盤はなかなか情報が集まらない用が描かれて、

主人公と一緒に今更情報なんて集まらないよ、という気持ちになります。

 

それが、中盤からどんどん答えが集まっていようになるともう止まりませんでした。

 

もう一人の主人公が新聞社というのも興味深いです。

 

主人公が当時SNSがあればとか、考えてしまうのですが、

 

何十年も前に残された証拠をたどって真相を追いかけていく調査方法が

 

足を使う、会って話を聞く。というのが面白いです。

 

作者も新聞社に勤務されていたようで、

 

そのあたりの空気感はほんとうにこんな雰囲気なんだろうなと思えるほどリアルです。

 

この警察機構とはまた違った、国家権力ではないが巨大なネットワークを持つ組織のやり方、というのを感じれて面白かったです。

 

そう思うと、新聞社には言葉や写真をつかって表現する、調べるノウハウが大量にあるんでしょうね。

 

新聞のやり方、底力は泥臭くて、地道で、その場面も人間臭くて面白いです。

 

中盤以降から、犯人は捜し続けるのですが、

 

徐々に“悪い奴ら”を捕まえることが目的ではなくなっていきます。


そこがこの話の面白いところです。

 

テーラーの主人側の主人公の目的は犯人捜しが目的ではないこと。

 

記者も徐々に犯人探しを続ける途中に、

事件に振り回された人々を知るにつれて、この事件とは?

 

というふうになっていきます。

 

印象的なシーン。


重要人物への取材を拒む人物に対して、だからこそ本人に聞くんです!と記者は怒鳴ります。


伝言ゲームになった時点で真実は真実ではなくなる。
理不尽な形で犯罪に巻き込まれたとき、(略)
私たちはいかにして不幸を軽減するのか。
それには一人ひとりが考えるしか方法はないんです。
だから、総括が必要で、総括するための言葉が必要なんです


そして、テーラーの主人公も事件を自分の中で総括します。

僕なりのやり方で未来に進もうと思います

 

これら終盤のシーンで、

 

つらいときはこうやって進むのな

と思いました。

 

 

映画もみようかな。

 

 

じゃまた。

 

 

 

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